連載小説「銀翼のイカロス(第35回)」 池井戸潤

週刊 ダイヤモンド
2014年1月25日号
第5章 策士たちの誤算


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(前号)
 帝国航空への債権放棄のとりまとめに失敗したタスクフォースだが、記者会見で乃村は徹底して銀行批判を展開し、白井国交大臣もそれを援護した。銀行が悪者扱いされ、このまま会見が終われば世論もそちらに傾くかと思われた。が・・・


(今号)
 そのとき、「東京経済新聞」の記者が挙手した。その後も他社の記者の質問が続いた。「タスフォースは、再建計画の内容を伏せたまま、一方的に債権放棄を迫ったのか?」
それからは銀行批判に傾いていた雰囲気が変化した。乃村と白井による烈しい銀行批判で幕を開けた記者会見だったが、結果はタスフォースへの開疑心をあおる予想外の展開で終わった。

 この展開には広報の近藤の功績が大であった。半沢は、渡真利、近藤と有楽町の馴染みの店でジョッキを傾けながら近藤に礼を言うとともに今後のタスフォースの出方を話し合った、そして「問題貸出し隠蔽」を明らかにしていくことを宣言するのであった。