半沢直樹シリーズ最新連載「銀翼のイカロス(第27回)」 池井戸潤

週刊ダイヤモンド 2013年11月23日号



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(第4章 荒ぶる男たち)

 金融庁検査における提出書類の数字の改ざん問題で曾根崎は担当を外され、日々企画部や業務統括部などの事情聴取を受けている。曾根崎は全て自分の考えでやったことだと証言をした。しかし半沢は、この件も含め紀田常務が不可解な政治家への20億円の個人融資にも絡んでいると思っている。
 旧T時代の問題貸出しを暴かないと、本当の意味で東京中央銀行負の遺産と決別できないと考えている。半沢は帝国航空をこれまで食い物にしてきた連中を、この際まとめて明らかにさせるのだという決意を新たにした。それが、バンカーのプライドを賭けた戦いなのだと。



(第5章 策士たちの誤算)

 金融庁長官から中野渡頭取に業務改善命令が発令され、併せて意見書も交付された。意見書には「貸し倒れ引当金」に債権を分類するよう求めている。このことはタスフォースが要求している債権放棄につながる可能性が高い。半沢には到底飲めるものではない。


 麹町にある日本料理屋の個室では紀田が二十歳も年下の女性国交大臣の白井から叱責を受けていた。東京中央銀行国交省タスフォースの債権放棄案を承認できないことについてである。大臣は一刻も早くタスフォース案について正式回答するよう紀田常務に詰め寄った。

 (次号につづく)