「メビウス1974」 堂場瞬一

2016年10月20日初版印刷
発行所 河出書房
著者 1963年、茨城県生まれ。著者109作目の作品

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 物語は1974年10月14日に始まる。この日の前日は中日ドラゴンズの優勝が決まり翌日本拠地に戻った巨人は失意の長嶋茂雄引退試合をこの日行われたダブルヘッター二試合目で行った。

 その時中学生だった久美子は、好きだった高校生下山英二の弟でまだ小学生だった和彦が英二と行くはずだった野球観戦に行って欲しいとせがまれ日比谷図書館で待ち合わせをしていた、その時近くで爆破事件があった。待ち合わせにきてなかった和彦が心配で爆破現場に近づいて助けられたのが公安の刑事。
 久美子は事件のあった2,3日前から英二とはその後も会えずじまい。その日から42年。英二は直接爆破事件にかかわったのではないが「狼」のシンパでいわゆる逃亡生活をしてきた。英二はある文芸誌に作家になった久美子が描いた「1974」を読んで久美子会わなければと決心する。
 42年の月日にはこの事件を境に英二にかかわる者たちにはどのような日々を過ごしてきたのか。再び会い介した仲間と関係者。シリアスな展開でその時代に引き込まれていく。400ページ弱にも及ぶ長編大作。これはドラマ化映画化しても面白い。

 この年は70年安保闘争で失望感を味わった学生運動の一部が先鋭化しテロ事件を起こした。いわゆる「連続企業爆破事件」とのちに言われている。1974年10月14日は三井物産爆破事件で東アジア反日武装戦線「大地の牙」グループが実行した。実は小説では実在の別グループ「狼」としてある。