「王とサーカス」米澤穂信

2015年7月31日初版
発行者 東京創元社
著者 岐阜県生まれ。11年「折れた竜骨」で第64回日本推理作家協会賞。14年「満願」で第27回山本周五郎賞を受賞。

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 大刀洗万智は東洋新聞社4年目大垣支局に在任中、同僚記者の自殺をきっかけに新聞社を辞め雑誌のフリー記者に転向した。雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールのカトマンズに向かった。常宿として泊ったのがトーキョーロッジという民宿。着いたばかりにネパールの王朝の中で王を含め王室の7人が殺害された。王の死亡原因等の取材を開始した。
 王室内の情報を得たいと、王室に勤務していた軍人に取材したのだが、その軍人の死体に大刀洗は遭遇する。

 大刀洗は記者は何のために取材するのか、何のために知らしめるのか。

 前日取材したときに言った軍人の言葉が万智の脳裏に宿る。
 自分に降りかかることのない惨劇は、この上もない娯楽だ。意表を突くようなものであればなお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。そういう娯楽なのだ。

 この小説は2001年6月のネパール王族殺害事件(ナラヤンヒティ王宮事件)を題材として書かれた。

 この作品は「満願」を超える著者の代表作になるのではないかと予感されるほど、いい作品である。