「月光のスティグマ」 中山七里

2014年12月20日 初版発行
発行所 新潮社
著者 1961年岐阜県生まれ。
 「さよならドッビュッシー」で「このミステリーがすごい」大賞を受賞。

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著者曰く恋愛ミステリー小説を発行元から依頼され3日間の構想期間をえてかきあげたとのこと。

 主人公は神戸に住む八重樫麻衣と優衣の一卵性双生児の美少女姉妹と淳平。三人は隣どおしの幼馴染。子どもの時近くの林の中に三人で遊びに行った時三人は変人に襲われ麻衣と優衣の頬に傷(スティグマ)をつけられてしまった。淳平は二人に将来ずっと守ってやると約束した。
 1995年1月16日神戸は大震災に襲われ二つの家族で生き残ったのは淳平と優衣だったが結衣は親戚に引き取られて名古屋へと。二人は離ればなれとなってしまった。

 二人が再会したのは東京で。淳平は東京地検の特捜に勤める検事。政治家が震災孤児への援助をしているNPOをトンネルにして政治資金を蓄財しているのではないかと調査してしようと当該ボランティア団体(NPO)に訪問すると、優衣は政治家の秘書になっていた。

 ボランティア団体は東日本大震災も起きたことにより更に団体の資金も増やすことに、更に中東での戦争孤児への援助も活動として拡大していった。

最終章の「いのちの戦場」のアルジェリアのシーンは、最近のイスラム国を描いた凄いリアルティのある作品である。

 
 このところ岐阜県の作家が多数大活躍しているが、中山さんの作品に私が初めて接したのは2010年、このミステリーがすごいの大賞を取られた「さよならドビュッシー」(デビュー作品)。年齢のわりにはデビューが遅い。朝井リョウと作家履歴は同じくらいである。作品数もまだまだ少ないが、この作品の完成度と読者に与える読み進むワクワク感は、岐阜県から、またひとり、人気作家の出現だなと予見される。