連載小説「銀翼のイカロス(最終回)」 池井戸潤

2014年4月5日号 週刊ダイヤモンド
第6章 イカロスの末裔

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(前号)
 記者会見に現れたのは、中野渡頭取ではなく半沢だった。更に、予定していた債権放棄についても断ると表明し、記者席は静まり返る。タスクフォースの乃村は、過去の不正取引をバラスと半沢を脅しにかかるが、逆に半沢が自ら説明を始める。

(今号)
 半沢は記者たちに、旧東京第一銀行から舞橋市にある箕田代議士のファミリー企業への資金の流れ、そして箕田が政治家の地位で得た情報を利用してファミリー企業を儲けさせたからくりを話した。
 箕田は当然激怒して証拠を出せと半沢に迫る。箕田も野村も半沢が証拠など出せないとたかをくくっている。
 半沢はメモを取り出した。そのメモには箕田のファミリー企業から箕田への10億円以上の送金記録が記録されていた。

 記者会見に同席していたマスコミは連日箕田代議士の「カネ問題」を大々的に取り上げ出した。東京中央銀行は旧東京第一銀行時代の箕田関連の問題貸出しについて金融庁へ報告をおこない、記者会見で説明もした。一連の騒ぎの終息に向かいかけた日、半沢は頭取に呼ばれた。
 頭取は半沢の労苦をねぎらうとともに自らの進退について考えを述べた。「紀田に引責をさせるが、自分も頭取を辞任するつもりである」と
 中野渡は自らの行動をもってバンカーとしての矜持と理想を半沢に教えたのだった。

(了)