連載小説 「銀翼のイカロス(第41回)」  池井戸潤

2014年3月8日号 週刊ダイヤモンド
第6章イカロスの末裔

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(前号)
 営業第二部長の内藤は中野渡頭取の元を訪れ、知らされてなかったタスクフォース訪問の件を問い質したが中野渡頭取は言葉を濁した。一方、帝国航空への債権放棄を拒否した銀行団に怒りを強める白井国交大臣は、銀行悪玉論を喧伝していた。



(今号)
 乃村が中野渡頭取に回答期限を切った三日後の月曜日の夜、箕田代議士,乃村、三国、紀田常務、白井国交大臣の5人が乃村の報告会との名目で酒宴を開いていた。その席で乃村は旧東京第一銀行との間で行われた舞橋の土地取得資金の件をたてに中野渡頭取と交渉したことを打ち明けた。それを聞いた箕田、白井、紀田は茫然自失となる。乃村は、中野渡には選択肢がないから心配いらないとほくそ笑む。

 翌日、紀田常務は中野渡頭取に呼び出された。そして箕田に対する20億円の融資について問い質される。これ以外に隠していることはないかと聞かれ、紀田は苦し紛れの顔で小さな声で「ありません」と・・
 中野渡は決断する、この件は公にはしない。と
 紀田は、頭取に頭を下げながら「乃村の勝ちだ」と確信するのだった。