「彼が通る不思議なコースを私も」 白石一文

2014年1月10日 第1刷発行
発行所 (株)集英社
著者 1958年福岡県生まれ。10年「ほかならぬ人へ」で直木賞受賞。

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 霧子は友人の別れ話について行ったところ、相手の男はビルの10階から飛び降りた。そのとき黒ずくめのふしぎな男と出会った。霧子は何故か死神?かと思ってしまった。数日後合コンの席で、その不思議な男と出会った。彼の名前は椿林太郎。小学校低学年は勉強にも集中できない問題児であったが、ある事件以後スポーツも万能で優秀な児童になった。高校も優秀な成績であり誰でも東大へ行くものと思っていたところ早稲田に・・
 部活もしっかりやり、トランポリンでは日本チャンピオンに2度もなる。しかしトランポリンもすっぱり止め、教師になった。林太郎は学習障害児の教育に情熱を持ち、子どもの教育で世界を変えようとする。学校の現場では林太郎の思いはかなえられず、私塾の体育教室を開設し障害児教育を始めた。
 林太郎には、不思議な能力があった。他人の寿命が見えるののである。人を見るとその人の将来の姿が見えるのである。それで相手がどのくらいの年齢まで生きるのか感じることが分かるのである。林太郎も漠然とその能力を知っていたのだが、はっきりしたのは以前付き合っていた彼女。彼女の死と対面した時から自分の持っている不思議な能力を意識しだしたのである。
 霧子と林太郎は結婚したのだが、電機メーカーに勤める霧子の異動により新婚早々から別居結婚を余儀なくされた。仕事に生きがいを持って働いていた霧子であったが友人の結婚妊娠で、自分も妊娠したいと林太郎に打ち明けたが、林太郎の返事はさえない。
 実は、林太郎は今このタイミングで霧子が出産すると霧子の命が危ないということをあんじていたのであるが、凛子には林太郎の思いがわからない。