連載小説「銀翼のイカロス(第34回)」 池井戸潤

2014年1月18日号 週刊ダイヤモンド
第5章 策士たちの誤算

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(前号)
 タスフォースに対する銀行団の合同報告会では主力銀行の開投銀が帝国航空への債権放棄を見送ると報告した。同じ日、国会において政府金融機関の民営化法案が廃案とされたのが、この結論を見出したのだ。開投銀が政府系ならではのアピールする必要がなくなったからである。

(今週号)

 報告後に設けられていた記者会見は白井大臣。乃村たちの華々しい勝利宣言の場になるはずだった。報告会が不調に終わったことを聞いた白井は、すごい剣幕で乃村に迫るのであったが、乃村はむしろ不調になった責任は、このタイミングで民営化法案を審議した民政党にあると白井を突き放した。乃村はこの窮状を逆転すべく記者会見に打って出ようと考えた。記者会見で乃村は銀行の利益優先主義、乱脈融資を主張し銀行の債権放棄こそ帝国航空を救う道だと世論の圧力を喚起させようとした。乃村の狙いは見事に的中したかに見えた。
(次号に続く)