「張り込み姫ー君たちに明日はない3」 垣根涼介

2010年1月15日 初版発行
新潮社

垣根涼介 1966年長崎県諫早市生まれ

初出 小説新潮
ビューティフル・ドリーマー     2008年7,8月号
やどかりの人生           2009年11月号
みんなの力             2009年12月号
張り込み姫             2010年1月号



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企業のリストラを代行する「日本ヒューマンアクト」に勤める村上真介の仕事は首切り面接官。
 英会話学校、旅行業者、自動車デイラー、出版会社のリストラ対象者の面接を行う。そこには人間ドラマがある。

1、ビューティフル・ドリーマー
 大学卒業後スイスのホテル専門学校に留学し、有名ホテルに勤務したがわずか半年で退社。1年間もう一度大学院に入学を目指していたが入学を取りやめ英語が生かせる職場ということで、英会話学校の講師をしている武田優子28歳との面接

2、やどかり人生
 大学卒業後、広告最大手に入社するも2年後に退社、1年間好きなバイク生活を送った後今度も業界最大手の会社の研究室に入ったけれども半年で退社。現在は旅行業界2位の日本ツーリストに勤務している古屋陽太郎24歳との面接。


3、みんなの力
 工業高校卒業後マスダ自動車の横浜にあるディラーに勤務している宅間幹夫33歳との面接。マスダ自動車は販売不振のためリストラをすることになる。メカニックとしては優秀で過去最優秀メカニックとして4度も表彰されていたが管理職としての工場長には同期に先に越されていた。そんな宅間には宅間のメカニック技術を信奉するフアンがいた。
 彼らの力によって宅間は思う存分力をふるえることができる修理工場を開業することができる。

4、張り込み姫
 日野恵28歳は東大文Ⅲ卒の文芸女性との面接。希望通り文藝出版社に入社できたが配属された部署が写真週刊誌の編集部。入社以来6年間編集部で頑張ってきた。途中部署替えの希望を出そうとしたが上司に慰留されて6年間が過ぎてしまった。写真週刊誌の販売数が200万部当初あったものが1割の20万部に落ちたのを機会に廃刊になることになった。
 恵は慰留した上司の力添えもあって念願の文芸部に行くことになっていたのだが、最終面接で恵の出した返事は退社を選んだ。