「私の男」 桜庭一樹④

第5章 1996年3月 小町と凪

私、大塩小町は最初から花を何故だか嫌な気がする感じがした。
小町は地元の高校を出て札幌の短大に進学した。
短大卒業後、北海道拓殖銀行紋別支店に勤めた。
腐野淳悟は同じ高校の2学年先輩だ。そして、淳悟と私は美男美女のカップルだった。
2年前は・・・、から淳悟が浮気をするたびに、苦しんだ。怒って、プライドがねじれて、
心に凪がきた。
風が吹かない。変化できない。

淳悟と出会ったのは高校に入学したとき。


淳悟は小学4年のときに漁師の父を海で失った、そして うちの親戚の本家の
塩じいさんが心配して母子の面倒をあれこれみた。
中学のときに母親も失い、更に遠くの親戚(奥尻島の竹中花の家)に
預けられたが、何か問題を起こして、わずか半年で紋別に戻ってきた。

第6章 1993年7月 花と嵐
私、竹中花9歳は両親と兄と妹の五人家族であった。
ただ、花はなぜだかわからないが、いつもいづらかった。

花が生まれる前は、父は出稼ぎに出ていないことがあった。
その頃に、淳悟はあずけられていた。

突然、夜の10時過ぎに大きな揺れが来た。
この地震で花だけが家族の中で生き残った。

中学校の体育館が避難所になって、花は身を寄せているところに
塩じいさんと、淳悟が駆けつけて探しにきてくれて、私は紋別に行くことになった。

大塩のじいさんは「欠損家庭」に育った淳悟に花をゆだねることに非常に不安を持っていた。

淳悟と花は養子縁組を行ない、竹中花は腐野花になった。





・・・花は淳悟の本当の娘だった。これは途中から読んでいてそうではないかと
思われだしたのであるが、非常にショックである。

本当の娘と知りつつ淳悟のゆがんだ娘への愛、家庭を知らない花が父親の愛は
こうゆうものだと受け入れてしまっている不憫さが悲しい。

父親が「私の男」

あたりまえの愛を知らない花は嫁いだこれからどうなるのか。
第1章では示唆されていない。
過去にさかのぼって書いていくというユニークな表現方法
桜庭一樹さんの作品、これで数冊目だが続いて読みたくなった。