「冬の光」篠田節子

2015年11月15日第1刷発行
発行所 文藝春秋
著者 1955年東京都生まれ。97年「女たちのジハード」で直木賞を受賞した。

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父は四国遍路を終えたキロ、徳島から乗船したフェリーで行方不明になった。後日遺体は発見されたが警察では自死として処理された。父には母とは別に20年間愛した女性がいた。父は、東日本大震災のボランティアとして震災地に半年間行っていた。震災地から帰ってきた後すぐに遍路の旅を始めた。
 次女は五月の連休を利用して、父の足跡を辿ってみようと思った。父の残した日記を頼りに辿ってみたのだが心に火係るものを残して東京に戻る。
 父の1周期を前にして震災地からトロ箱2箱に入った大量の秋刀魚が父宛に届いた。お礼の電話をすると送り主は父が亡くなったフェリーで同乗していたという。とても自殺するような雰囲気ではなかったという。
 1周期に当たる日に、徳島から同じ便のフェリーに乗りフェリーから「冬の光」をみて、ちちの胸中に接することができた気がした。



 作品中「大垣」の地名が何回か出てくる。叔母の家という設定である。著者は八王子の生まれと育ちで地元の市役所に勤務している傍ら、小説執筆教室に通っていた。女高生仲間に宮部みゆき鈴木輝一郎がいた。鈴木は大垣在住である。東京から離れた西の場所で思いついたのが鈴木の住所というところだったのだろう。