「生還者」  下村敦史

2015年7月21日 第1刷発行
発行所 講談社
著者 1981年京都府生まれ。


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滋賀県に住む主人公増田直志は兄謙一、清水美月は登攀技術を磨くため御在所岳の厳冬期の凍った岩壁で練習を重ねている。厳冬期の白馬岳登山ツアーに3人が参加する予定であったが直志は怪我の為参加できなかった。ツアーはブリザートに遭遇し美月は他の女性参加者とともに雪崩に遭い遭難死してしまった。その原因には新人ガイド加賀谷の女性たちを見捨てて自分一人で下山したのではないかと疑いを兄謙一たちはもっていた。
 兄謙一たち、この遭難で生き残った男たちは心の傷を治すための会に参加していた。その会で再び会った生き残った男たちは心の傷を屈服するには自分たちを厳しい環境に立つためカンチェンジェンガに登攀することに。そしていきのこったガイド加賀谷を登山に誘う。このパーテーは雪崩に遭難し兄の遺品のザイルには人為的な切れ込みがついていた。

 直志はこの登山は加賀谷に対する復讐だったのか。何故兄は死んだのか疑問を抱いてカンチェンジェンガに行く。氷河のクラックに落ちるという事故により不明だった加賀谷の亡きがらと遭遇する。それにより直志は兄の考えていたこと、白馬岳の遭難事故の真実を見つけた。

 この小説は久しぶりに出会った素晴らしい作品でした。何か賞が取れるといいですね。

 井上靖の代表作「氷壁」にも切れたナイロンロープ、御在所岳が出てきますが、この小説とはコンセプトが違っています。