「八月の六日間」 北村 薫

2014年5月30日 初版発行
発行所 角川書店
著者 1949年埼玉県生まれ。「鷺と雪」で09年第149回直木賞を受賞。

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 主人公は出版社に勤める副編集長(後で編集長になる)独身女子の「わたし」。
 40歳を目前に仕事に疲れた「わたし」は、山の魅力に引き込まれる。山を通して少しづつ「自分」を取り戻していくうちに、さまざまなものに支えられ励まされていることに気付く。
 物語は5章から構成され、それぞれが山行編となっている。

第1章 九月の五日間
 「わたし」は藤原ちゃんに誘われて初めて登った燕岳からみた槍ヶ岳にあこがれ、今回単独行で登山する。
  有明温泉→合戦尾根→燕岳→大天荘(泊)→西岳→水俣乗越→東鎌尾根→ヒユッテ大槍(泊)→槍ヶ岳→槍沢ロッジ→横尾→上高地


第2章 二月の三日間
 「わたし」は裏磐梯雪山ツアーに参加して、スノーシューに挑戦する。

第3章 十月の五日間
 「わたし」は北アルプス雄大な眺めが望める常念岳を目指した。
 上高地→徳沢(徳澤園・泊)→横尾→蝶ヶ岳ヒュッテ(泊)→常念岳→大天荘→燕山荘→中房温泉

第4章 五月の三日間
 「わたし」はゴールデンウイークの連休を利用して残雪の北八ヶ岳で初アイゼンに挑戦した。
 麦草峠→白駒池(青苔荘)→高見石小屋(泊)→賽ノ河原→渋の湯

第5章 八月の六日間
 「わたし」は北アルプス南部の地図を広げていたら、富山から折立、薬師沢小屋と進んだ先にある高天原温泉という文字が目に飛び込んできた。
 折立→薬師沢小屋(泊)→雲ノ平→高天原山荘(泊)→三俣蓮華荘(泊)→双六小屋→鏡平→わさび平小屋→新穂高平湯温泉(泊)



 主人公の「わたし」ではなく私は第2章の裏磐梯以外のコースは行ったことがあるので、読みながら風景が浮かんできます。
 高天原荘から高天原温泉に行く道沿いには実を付けた野生のブルべりーが辺り一面に生えていたことを思い出しました。最低2泊はしないといけない秘境の温泉は野性味満載。雲の平の桃源郷のような風景は北アルプスの奥深さを感じる場所ですね。



 この本を読んで折立・黒部源流・新穂高のルートに挑戦する人が増えると静かなこのコースもにぎわいが増すでしょう。先の台風8号の影響で中央線が不通になっているこの時期電車利用して登山する方はこの際高山、富山からのアプローチの絶好の機会と思っていかがでしょうか。