連載小説「銀翼のイカロス(第42回)」 池井戸潤

週刊ダイヤモンド 2014年3月15日号
第6章イカロスの末裔 10(承前)

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(前号)
 民政党の箕田と旧東京第一銀行との不正取引について、タスクフォースの乃村が中野渡頭取にばらした事を知った紀田常務は、顔面蒼白となった。翌朝、紀田と法務部の山本は中野渡頭取に呼び出された。中野渡はこのことを公にしないつもりだという。


(今号)
 頭取室から出てきた山本は今後どうなるのか心配で紀田に尋ねるのだが紀田の返事はそっけない。おこなったことには責任を取らなければならん。
 紀田は山本に検査部の富岡に見つけられてしまった資料を取り戻せと命令した。丁度そのとき検査部の幕田から山本に富岡が資料を持ち出して保管している地下倉庫に行くところだと連絡が入った。

 地下倉庫にいた富岡に幕田、山本と木原は声をかけ、富岡から資料を取り返そうと言い争いをしている処に、富岡から事前に連絡を受けていた半沢が三人に声をかけた。「お前ら、東京中央銀行には、過去に隠蔽された問題貸出しを内定する頭取直轄の検査官がいるという噂を聞いたことがないか」
 それを聞き動けなくなってしまった三人に続けて「舞橋空港予定地と箕田ファミリー企業の不正融資の事務を取り仕切っていたのは山本だ」と告げる。そして「紀田は、お前に全責任を負わせて逃げるつもりだぞ、お前の書いたメモには紀田は丁度その時出張していて、紀田は閲覧の印を押していないからな。」
富岡も追い打ちをかけて山本に言う「紀田にすがっても助けてはくれないぜ、隠している書類をすべて出せ。そうすれば多少の口添えはしてやる」

次号に続く