「北斗」 石田衣良

2012年10月30日 第1刷発行
発行所 株式会社集英社
著者 1960年東京生まれ
初出 「小説 すばる」2009年5月号~2012年10月号

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 端爪北斗は両親から常に虐待をされてきた。父親が亡くなって平穏な日々が来るかと思われたが残念ながら来ることもなく北斗は児童相談所に助けを求める。
 児童相談所で紹介された里親により、北斗は初めて他人の愛情を感じることができた。が、幸福な日々も長くは続かなかった。里親の綾子お母さんが癌の病に伏せてしまうのである。綾子の友人が見舞いに訪れ、不治の病でも治るという水を見まいとして置いて行った。綾子は喜んで愛飲するので、高価ではあったが北斗は愛する母のために購入を続けた。しかし、週刊誌等で「水」は何の効果もないまがい物ということで問題となりはじめた。北斗はそんな水を高架でまがい物だと知らない綾子は喜んで飲む姿を見て購入をやめることはできなかった。しかし、綾子が死ぬまぎわにその事実を知ることになる。
 絶望した北斗は「水」の販売者への復讐を決断する。復讐は成功せず、2人の女性を殺してしまった。北斗は裁判の中で罪のない2人をあやめてしまったことの回心していくのであるが、この心理状態を詳細に表現している。
 今までにはない石田衣良小説である。