平成21年11月30日初版発行
初出 「
野生時代」2009年1月~7月号
渋川春海(1639~1715)は将軍に仕える
囲碁の家元四家の一つ、安井家に生まれた
棋士で日本の暦が800年ぶりに改まる契機となった貞享暦(じょうきょうれき)を作った。
貞享歴の成立には、それまで中国や日本で使用されていた暦の存在だけでなく、日本における数学や
天文学の発展、春海の周囲の人々の学問的・政治的な協力なしではなし得なかった。
戦国の混迷がまだ残っていた江戸期、
徳川家綱の時代に壮大な国家プロジェクトが動き出した。白羽の矢が立ったのは
囲碁家元の安井算哲(
渋川春海)。算哲は数学・
天文学・暦などにも興味を持っていた。
あるとき北極出地(
北極星を頼りに測量の旅)を命ぜられた。そこでたぐいまれな能力を認められ、日本独自の暦の作成実行者として選ばれることになった。
完成までに春海は挫折の連続であったが、春海の生来の素直さと仕事への愛で完成をすることができた。 そんな春海の人生を描いた作品である。
仕事人として多くの読者にきっと共感を与えるであろう春海である。なるほど、今年度の
本屋大賞として選ばれただけの作品である。